iPhoneアプリ「どこでもじゃんけん」。ダウンロードはアイコンをクリック
 日本人とじゃんけん

じゃんけんアプリを作ってみました(現在は日米英でのみダウンロード可能)。いろいろ設計はあろうかと思いますが「どこでもじゃんけん」は複数人のグループがリモートで「どこでも」じゃんけんできるようにしたアプリです。ただ、自分で手を出すのではなく、コンピュータに自分に代わってじゃんけんをやってもらいます。ここで念頭に置いているのは複数人で順位を決めるじゃんけんで、グループじゃんけん、と便宜上呼ばせてもらいます。何人かが集まってまず全員で始めて、勝ち組と負け組への枝分かれを繰り返し、それぞれで一人の勝者または敗者が出る(最終的には2人で雌雄を決する)まで続けるというお馴染みの方式ですね。これで何人であれ、全ての人に順位が与えられる。システムとしても中々の代物です。

そもそものきっかけはテニスグループでメンバーの一人がいくつかグッズをもらってきて、それをどう分けようかという段になり、まあじゃんけんだよね〜となったもののなかなか集まれずに大分遅れてしまったという経緯からです。ここでじゃんけんという発想になること自体、じゃんけんが日本文化に染み込んでいる標しのように感じました。ただグループじゃんけんは基本対面でするもので、ビデオ会議というのも大袈裟な上タイムラグがありますし、何よりサブグループに分かれるのが大変です。そこでどこでもグループじゃんけんできるようになるといいよね、と思ったわけです。まぁ単にランダムに番号を振るアプリならいくらでもあるでしょと言ってしまえばそれまでですが、それだと遊びがありませんから。

 
 グループじゃんけんとあいこの数

さてこれもお馴染みだと思いますがグループじゃんけんには一つの難点があります。数が多いとあいこが続いてそう簡単には決まらないという点です。色々これを避ける工夫があるようですがその辺りはさておいて、ここでしたいのは、「グループの人数がわかっている場合、一体どのぐらいでカタがつくのが普通なのか」というお話です。

またクイズでいきましょうか。まずは一回戦だけを考えましょう。20人の時、大体何回くらいのあいこを覚悟すべきだと思いますか?

    1. 50回くらい
    2. 100回くらい
    3. 1000回くらい
    4. 2000回以上

答えは3です。ちなみに10人だとたったの20回程度ですから、かなりの勢いで増える数字ですね。別のブログで書いたダブルスの組み合わせほどではありませんが、これだけでも、15人くらいを超えたらじゃんけんはちょっとやめとこうかな、と思うのではないでしょうか。

しかも、です。順位をつけるグループじゃんけんの場合、話はここでは終わりません。10人だとして、上記20回は「一回戦」に限った数字です。この後も、2回戦、3回戦と続きそれぞれで一人の勝者が出るまで続くわけです。10人で初戦が終わっても、例えば2人勝ったとして、8人ではそんなにあいこの可能性は減りません。最終的にグループじゃんけんが決着するまでには、どれくらいかかるのでしょう。曖昧さを避けるため少しだけ定義上の話をすると、ここでは同時並行開催を許して、その分はまとめて数えて「時間」でどれだけかかるかを考えます。同時並行分を全部数えるよりはだいぶ数が減るわけですがそれでも概ね初戦の7倍くらい。20人だと1000×7で7000回くらい、10回でも140程度は覚悟したほうがいいという結論です。10人でもやめておきたくなりませんか。アプリなら、あいこが続くのを眺めているだけですから楽です😄。とはいえ数千回のあいこを眺めるのも退屈ですので「どこでも」では一応15人までで切ってあります。

 
 じゃんけんとAI

ところで閑話休題ではありませんがこのアプリ、AIですか?と聞かれたのでちょっとその話をします。商売柄時代柄この質問よく受けるようになったのですが正直戸惑うことが多いです。というのも、実はAIにも長い歴史があるのですが、つい数十年前までは論理や数学からシミュレーションするものが主流だった一方で、今流ではデータやシミュレーションから論理や数学を推理する、要するに昔の真逆になって、そのイメージが強いと思うからです。関連して、AIが「怠惰を助長する」のではないかという懸念もあるようですが、自戒の念を持って振り返ると、開発者もデータ頼りであまり考えないようになっている気がします。やってみてうまく行くならなぜうまく行ったかはさほど気にしなくていいんじゃない、的な雰囲気です。で、質問に戻りますが、当アプリは古式ゆかしき昔風AIですね。昔風のいいところは数学や論理のバックアップがあって確信が持てることです。当世風にもいいところは沢山あるんですけど、気になるのはやっぱり思考上の怠惰です。大きなデータプロジェクト、特に政府下達のもので問題が発覚する度に、「入念にテストしたんですが」的な言い訳を聞くので、そんな時は、テストに使う時間、もう少し「考える」方に回したほうが良かったんじゃない、と思ってしまいます。

じゃんけんに戻りますが、世の中確率のタネは多かれ、じゃんけんほど確率に関する具体的な問題が豊かな素材は中々ないと改めて思います。しかも、ややこしすぎず、単純すぎずで、大抵はシミュレーションなしに片付きます。上記の問題ももう少し詰めて考えたいですし、AIにも色々あるということを考えてもらえるきっかけにもなるんじゃないかと思ったりしています。